晴|去来

モンゴルで買ってきた数珠が、親切なパスタ屋主人によって保護されて、手元に戻ってきた話を昨日書いた。
帰って来る物もあれば去っていく物もある。


今日は手袋が去っていってしまった。
朝の大手町駅、慌てて降りた私は、すぐに手袋が無いことに気づいて振り返ってみた。
すると案の定、電車から降りたすぐのところにかたっぽの手袋が落ちている。


ああ良かったと手を伸ばして拾おうとしたその瞬間。
私の目の前で、手袋は電車とホームの間の隙間に、ぬぼーっとしたサラリーマンによって蹴り込まれてしまったのであった。
思わずデカい声で「ぉああっっ!」と叫ぶ私。
次の電車を待つことにした人や今まさに乗り込もうとしているOLがその声に振り返った。
が、当の蹴飛ばした本人は、やっぱりヌボーーーッっと立っているだけだった。
ムッキー!!アナウンスでも「ご乗車の際には足下にご注意下さい」って言ってるだろ!
見事に蹴飛ばしやがって!!てめぇが隙間に落ちちまえっっ。


次から次へと電車が到着する時刻。
駅員に電車を止めて拾って貰うまでの物でも無い(すでにもう片方には穴が空いている様な代物だ)から、諦めて会社に向かったのだった。


前の「愛しの君」に乗り始めた頃…だから、2000年頃か。
銀製の羽型ペンダントヘッドを三鷹の道端で買い、気に入ってずっと身につけていた。
HONDAの羽マークを意識して、バイク乗りのお守り代わりに買ったものだった。


なんの縁だか、それが本当に私にとってもトレードマークみたいになって、革ひもが2回ほどすり切れて取り替えるほどに、ずっと毎日毎日それだけは身につけていたので、見覚えのある人もいるかも知れない。


日本国内のツーリングはもちろん、2000年末のニューヨークにも、そして2年間のカンボジアにも連れて行った。
それほど気に入っていたペンダントヘッドだった。
が。
それを日本に帰国してまもなく、失くしてしまった。


ある日会社で仕事をしていて、ふと気づいたら無くなっていたのだ。
革ひもがほどけて首に残っていて、ペンダントヘッドだけが無い。
会社では、狭いフロアの決まった場所しか動き回らないので、あんな大きな物を見落としようがないのに。
トイレに流してしまったとしか考えられないが、とにかく忽然と消えてしまったのだ。


気に入っていたので、それなりにショックだった。
しかし、あれは「お守り」だったので、役目を終えれば無くなるコトもあるのかも知れないと、自分を納得させたのだった。


その後、同じようなペンダントヘッドが欲しくて「縁があれば」と気にかけていた。
なのに全然見つからないのだ。これが。悔しいことに縁が無いのだ。


一時的に…と思ってぶら下げていた代わりの銀アクセサリーとのつきあいが、長くなっても、ちっとも愛着が湧かないことに飽き飽きして、ついに先日「インターネットで検索して通販」という飛び道具を使ってしまった。
前のほど重厚さは無いけれど、カーブの具合と裏面の触り心地が少し似ている。
やっぱり首から銀の羽下げていると、なんか安心する。嬉しい。
こんな小さな物一つ新しく来だけで、色々と「ちゃんとしよう」という気持ちになったりするのであった。


朝飯:サラダ、ヨーグルト、ゆで卵/昼飯:日替わり弁当/夕飯:五目焼きそば


2006/01/20(Fri) 22:11:06