それでもボクはやってない 85点

完成度の高い良品。
もともと裁判物は大好きなのだが、この作品は奇をてらわずに、丁寧に裁判を描いている。
事実から開始して時間順に進んでいく時間軸も、各公判を丁寧になぞっていく作りも、この作品によく合った脚本だ。


一緒に観た友人達と私の、見終わっての第一声は「疲れた〜」である。
裁判物だから当然なのかも知れないが、一つ一つの発言、表情、沈黙などが、雄弁に物語を作っており、地味な作品なのに最初から最後まで息を付く暇が無く、目と耳を総動員して作品に集中してしまったからだ。


ネタバレになるので書かないが、ラストの切り方も良いと思った。その後のことは、今回の描きたいストーリーからすると蛇足だからだ。
2009/5から裁判員制度が導入されるということだが、民主主義も個人主義も本当の意味で根付かない(それ自体は文化の違いであり優劣はない)この国で、正しく運営されるとは思えない。
この映画を観ると余計にそう思う。


ちなみに、映画の元ネタになった(監督にインスピレーションを与えた)事件を端的にまとめているページとして例えば以下があった。
http://www.jlaf.jp/tsushin/2002/1078.html